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澤田会長の一ヶ月

澤田会長の一ヶ月

 

このコーナーでは、澤田隆治会長の一ヶ月を日本映像事業協会での活動報告とともに振り返ります。

6月3日、ギャラクシー賞の授賞式で第一回志賀信夫賞を受賞されました、おめでとうございます。

澤田

ありがとうございます。志賀信夫さんは、放送批評懇談会のリーダーとして去年引退されるまで、日本におけるメディアの御意見番として常に第一線で活躍されました。大阪のテレビ局で私が担当していた娯楽番組を評価してくださった最初の方でした。その後制作プロダクションを立ち上げてからも、新しく誕生した番組製作方式に期待をし、常にクリエーター側に立った励ましの言葉をいただきました。その志賀信夫さんの名を冠した賞の新設に際し、私が選ばれたことは身に余る光栄であり、ギャラクシー賞の選考員の方々には心から感謝しています。

 

内示があった時、受賞理由を説明いただいたのですが、『てなもんや三度笠』『花王名人劇] 場』『ズームイン!!朝!』など永年にわたる番組の演出、プロデュースの業績に加え、テレ ビ制作プロダクションの組織化に力を注ぎ、全日本テレビ番組制作者連盟(ATP)を発展させ、 日本映像事業協会の設立によるテレビ制作者の地位向上、互助などの情熱が評価の対象 になったということで、私としては何よりも、そのことがうれしく、喜んでお受けいたしました。 この受賞は、設立以来17年の間、私の考えをサポートして下さった日本映像事業協会のメ ンバーの皆さんのおかげであり、この栄誉を共にわかち合っていただければこれに過ぐる幸 せはありません。

受賞式のスピーチで、今日まで私を支えてくれた家内への感謝と、「この受賞は、もっとやれ ということなのでしょう。いい番組を作っていかないとテレビの未来はない。残りの人生、しっ かりとがんばり、その役に立ちたい」と申し上げました。どうか力をお貸し下さい。

協会も念願の三つの委員会をスタートさせ、精力的にプランを練り、実現のために動き出しま した。互助組合から制作プロダクションの生存を掛けて一歩踏み出したJ-VIGに強力なバック アップを賜りますことを祈念しています。

毎年、富山に行かれていますが。
澤田

父が富山県高岡市の出身ということもあって、私たち一家は終戦で外地から高岡に引き揚げてきたのです。中学一年だった私が二年間高岡中学校へ通ったという縁などから、今でも毎年7月に行われる大島町絵本館の「絵本コンクール」の審査と、9月の「高岡爆笑名人会」のイベントの演出のために、年に10回以上は富山空港を利用しています。

今私が力を入れているのは、去年の「絵本コンクール」で最優秀賞に輝いた「ポップアップ絵本」の製作です。

「ポップアップ」「とびだす絵本」「仕掛本」と呼ばれる絵本が今ブームだということはご存じかと思います。150年以上の歴史のあるポップアップの世界に10年ぐらい前アメリカにロバート=サブタという天才作家が登場して世界中をアッといわせ、5年ぐらい前からは日本でもブームになり、今は大型書店の絵本コーナーには、必ず、ページを開くといろんなモノが起き上がってくる絵本が置かれるようになりました。

私はテレビでは公開放送の仕事が多く、一旦組み上げると変わらない舞台セットをなんとか動かして場面を増やしたいと考えていました。そのヒントにならないかとコレクションしたのが、世界のポップアップ絵本でした。『花王名人劇場』などでは先人のアイデアをいただいて舞台上でいろんなトライをしたものです。

今から17年前、高岡の近くの大島町に絵本館が設立されることになり、館長に私の大学で6人しかいなかった史学科の同級生であった高井進さんが就任。この絵本館のメインの催しが、アマチュアの「絵本コンクール」で、国内だけでなく海外からも数多く応募してくるなど大変な人気なのです。

この絵本館にはホールがあって、私が趣味の「ポップアップ絵本」の楽しさを喋ったり講演の企画のお手伝いをしている内に、すっかりこの絵本館が好きになり、私のコレクションの「ポップアップ絵本」を絵本館に収蔵していただくのを条件に、ポップアップ・仕掛け絵本の部門を設けて募集して欲しいとお願いしました。それなら審査を引き受けてくれということで、以来10年、仕掛け絵本の部門の審査を担当しています。圧倒的に絵本の応募が多く、すばらしい作品が最優秀賞を目指して競い合います。

「しかけの部門」は絵本に仕掛けを作るアイディアが要るだけに応募数は少ないのですが、それでも年々いい作品が増え、見応えのある受賞作もあるようになってきました。そして四年目に入った去年の「絵本コンクール」で私が夢に見た「しかけ絵本」の部門の作品が最優秀賞に輝いたのです。

『三国志・燕虎物語』という作品で、「三国志」の世界をダイナミックなポップアップに仕上げた内容で、審査員には受賞してからしか判らない作家のキャリアを見て、私はびっくりしました。まだ22才の大学を卒業したばかりの畠智慧さんという女性だったのです。 しかも、高岡市の出身で絵本館には小学生の頃から通って、しかけ絵本の楽しさを覚えたという、私の願いを実現してくれたような新人の登場です。

 

私は「お笑いの世界」で多くの新人をスターに育て上げた体験はありますが、趣味の「ポップアップの世界」ですごい才能の新人に出会えるとは思ってもいませんでした。

後日、お会いしたのですがキラキラした才能を感じさせる素晴らしい女性でした。この才能あるクリエーターをなんとか世に出してあげたい。とプロデューサー根性が湧いてきて、たちまちいろんなプランが浮かび、今それを一つ一つ形にしているところです。まず今年の11月には作品が絵本の大手出版社「大日本絵画」から出版されます。ポップアップの世界に日本の若い才能がデビューするのです。ポップアップの場合、どんなものか説明するために見本が必要です。コンクールで出品された作品を持って歩くわけにも行かず、一気に出版することになってしまったのです。幸い多くの人の力をお借りして順調に進行しています。これからがプロデューサーの腕の見せどころです。というわけで、今私は全く異業種の世界で、熱中しています。絵本に関心のある方も多いと思います。中でも「ポップアップ」は世界に通用する新しい3Dのソフトでもあるのです。一人でも多く仲間になっていただければと熱望しています。仲間になりたいと思われたら、直接私にお電話下さい。

 
いま「笑いと健康」というテーマで講演を数多くされていますが・・・。
澤田

「笑いと健康学会」(http://www.tvland.co.jp/warai/index.html)を立ち上げて5年経ちました。

笑いが健康にいいということを医学的に実証しようという決意で結成した学会ですが、文系の私が会長をして活動できるのは、医学の世界の権威の方々に支えられているからなのですが、これには6年間在籍した帝京平成大学で「笑いとセラピー」というテーマの講義を担当したことが活きました。

人に教えるために70才近くになってから医療の勉強をたっぷりしました。西洋医学の起源から始まって東洋医学や日本で発達した漢方・医療について資料を読み漁り、「笑い」が人間の健康に大きな影響を与えることの確信を持ち、専門の先生の御協力を得て実験をスタートさせ学会で発表。いまではその成果が最近の健康に関する研究会や関連本などで紹介されるようになりました。でも笑いの実験というのはマウスでは不可能で人体実験以外の方法は無いため簡単には実施出来ません。道は遠いというのが正直な感想です。 現在は健康に不安を抱く高齢者の方々の生活に笑いを提供する催しを各地で開き「笑いと健康実践篇」として思い切り笑ってもらっています。そのためには新しい笑いをつくるスターを育てる必要があり、そのプランはいままで55年の間お笑いの世界で仕事をしてきた私の経験から判断すると、まぁ「いいところまできている」という感じです。

いま私の一押しは、「ゆるキャラ芸人・ぴろき」です。丁髷頭に丸メガネ、フリルのブラウス、蝶ネクタイ、ギタレレ弾きながら自虐ネタ漫談を披露するというヘンな芸人・ぴろきです。私の仕事には必ず登場します。興味があれば御一報ください。東京近郊で行われ る公演をご案内します。そこには新しい世界が展開しています。一度覗いて見ませんか。

 

そういえば、「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」の第2版
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/download/guideline/Housou2th.pdf)が出てから1年が経ちました。

ここのところガイドラインを策定した総務省には表立った動きがみられないようですが・・・

澤田

丁度去年の今頃までは一昨年から関わっていたガイドライン策定の検討会が頻繁に行われ、参加していました。しかし第2版が出て以降、政権が変わったこともあって「その後」が停滞している状況なのは確かです。

ただ、検討会の席でも「その後」が重要で、ガイドラインが現場で正しく機能しているか追跡し続けることの必要性を訴え続けてきました。また派遣の問題など引き続き検討していかなければならない問題もあります。

協会としても、総務省に対し引き続き働きかけを行いたいと考えています。協会のメンバーの皆さんには今一度ガイドラインをお読みいただき、「問題となりうる事例」に当てはまるような要求がまかり通っていないか、新たに検討会の俎上に上げるべき問題が起こってないか協会にご意見をお寄せください。

昨年の今頃は総務省に足繁く通い、制作現場の窮状を訴えていました。ガイドライン検討会は非公開が原則のため子細な内容を明かすことは出来ませんが、今後はこのコーナーでその討論の雰囲気だけでもお伝えできればと考えています。

また、最後に会長もお願いしている通り、総務省へは引き続き陳情を行っていきますので材料となるような事例をお寄せいただけますよう、重ねてお願い申し上げます。

 

インタビュー 広報委員会編集員 岡村宇之