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株式会社 SOLIS produce
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今回の『広報委員が行く!会社訪問』は、「太陽のように周囲を明るくしたり、あたたかい気持ちにする」というコンセプトでテレビ番組などの企画・制作を行っている株式会社SOLIS produce(ソリスプロデュース)、杉村和彦社長にインタビューします。
杉村社長は、株式会社テレテックを経て、株式会社ジッピープロダクションの設立に参画して、27年間在籍。ディレクターとしてギャラクシー賞をはじめ数々の賞に輝くなどご活躍されつつ、後進の育成にもあたってきました。後進をしっかり育てたいというお気持ちは、ソリスプロデュース設立の理由にも関わっているそうです。
インタビュアー:広報委員 株式会スーパー・ブレーンNEX 黒川 幸太郎
写真撮影:広報委員 WACホールディング(株) 岡村 宇之
(2019年11月取材)
Q. 今日はよろしくお願いします。オフィスの東西の2面が大きな窓で、眼下には公園も見え眺めもよく、とても明るい雰囲気ですね。 ありがとうございます。朝日と夕日をきちんと感じられる空間にしたくて、7年前の設立からこの場所でやっています。出社も退社も遅く、朝は誰かが寝ている……といったオフィスにはしたくないんです。
Q. ソリスプロデュースの“ソリス”はラテン語の「太陽」ですよね。この社名にはどのような意味を込められているのでしょうか? 以前所属していた会社(ジッピ―プロダクション)では、「自分たちは演者や取材対象に照らされて輝くんだ」という意味を込めて、月をモチーフにしたコーポレートロゴにしていたんですよ。 それに対して、今回はもうちょっと前面に出て「太陽」にしたいなと。明るいスタッフからなるチームで切磋琢磨して、あたたかい気持ちで番組を作りたい。そういう会社でありたいという願いを込めました。社長からADまで言いたいことが言えて、土日はちゃんと休みつつ、無理せず楽しく仕事ができる会社でありたいと思っています。
明るいオフィスもそれを表していますね。
Q. TBSの『がっちりマンデー』をレギュラーで手がけられていますが、会社全体としても情報系の番組が多いのでしょうか? そうですね。メインは情報番組、情報ドキュメント、情報バラエティなどでしょうか。明るく楽しく作りたいので、ジャンルとしてもギスギスしたものより、あたたかいもの、楽しいものを主体でやっていこうと思っています。
Q. 情報バラエティ全盛時代ですが、自社の強みはどんなところにあると考えていますか? 最終的には個々のディレクターにかかっているのでなんとも言えませんが、スタッフの一人一人が情報ひとつでも細かく深堀りするために、しっかり汗をかいているところかもしれません。簡潔にまとめるにしても、あらゆる選択肢を検討した上でその形に落ち着くものだと思うので。私もプレビューでは、「どうしてこうしているの?」「これはなぜ入れないの?」など、なるべく細かく口を出すようにしています。そこに明確に答えられない番組は作りたくないですね。
Q. プレビューのとき以外で、日ごろからスタッフの方々に仰っていることなどはありますか? 例えば、新人スタッフには、資料1枚を作る際にも「なぜココはこうしたの?」「ここは色を付けたほうがいいんじゃない?」など、いろいろ細かく言っています。視聴者が見やすい番組を作るように、資料も受けとる人が見やすいものにすることを考えて欲しいですからね。ディレクターが読むのか、スポンサーが読むのか、局の人が読むのか。読む人にとっても変わってくると思うので。うるさいオヤジだなぁ、と思われているんじゃないでしょうか(笑)。
Q. 杉村社長にはプロデューサーの面と経営者の面があると思いますが、経営者としても細かいのですか? お金の面や、スタッフ採用では細かいかもしれません。ただ、基本的には制作者として細かいタイプですね。
Q. その細かさに至った道筋、杉村さんのテレビマンとしてのご経歴についてうかがいます。放送業界に入られたのは、どういった経緯だったのでしょう? 僕は大学が日本大学芸術学部だったので、もともとTV業界に入ろうとは思っていました。就職は叔父の関係から地元局のアナウンサーになろうとしていました。ところが、大学の先輩で当時テレテックにいた森澤広明さん(現・WACホールディング会長/日本映像事業協会会長)とお会いする機会があり、「やる気あるのか?」「じゃあ明日からウチでやってみるか」と言われて、テレテックに入社することになりました(笑)。
Q. テレテックさんは、中継車やスタジオなどのリソースも持っている技術も手掛ける会社ですよね。 そうですね。制作のスタッフは当時、森澤さんと、僕と、あと3人だけ。最初は、『水曜スペシャル』(テレビ朝日)の『川口浩探検隊』とか、『刑務所シリーズ』のADをしていました。そこから、テニスやキックボクシングの中継を経て、テレ朝の正月特番『日本百景』でディレクターデビューをしました。 その特番でだいぶ揉まれましたね。30~40代のディレクター達と大御所作家が中心で、20代の僕はすごく厳しくあたられました。僕の意見では却下されるのに、同じことを違う人が言うと「面白い!」となったり、「この野郎……」と怒りを覚えたこともあります(笑)。それでもプレゼンの仕方を研究したり、なめられないように目立ちすぎない服装にしたりいろいろ努力もして、森澤さんにもサポートしていただきながら、ディレクターとして一応は認めてもらえるようになりました。ジッピープロダクションを一緒に立ち上げた松永通之さん(同社創業者)とも、この『日本百景』で出会っています。
Q. その後、テレテックを退社されて、松永さん、林えり子さんと3人でジッピープロダクションを設立されたんですよね。 はい。ジッピーでのディレクター時代は、『タイム21』(後の『スーパーテレビ情報最前線』)とか、『いつみても波瀾万丈』とか、ドキュメンタリー系の番組が多かったですね。当時僕は人と会話するのが苦手だったので、その代わりひたすら観察力を磨きました。例えば、シェフや寿司職人を撮っているときなどに辛抱強く狙っていると職人から、「言ってくれれば(意図すること)やるよ?」と言われるんですけど、そこは我慢。じっと観察した上で、カメラマンだけに「そろそろこうなるはずだから」と伝え、狙ったものを収めていました。それを繰り返すうちに、苦手意識のあったドキュメンタリーでも、徐々に認めてもらえるようになったと思います。
杉村社長は数々の賞も受賞されています。受賞歴はこちら。 ●『みなしご子猿モンちゃんは幼稚園児』(日本テレビ 1988年) →第13回動物愛護映画コンクール内閣総理大臣賞受賞 →バンフ(カナダ)テレビジョンフェスティバル優秀作品賞受賞
●『母は走った!家族の元へ…真夏の激走85km・研ナオコ48歳の挑戦』(日本テレビ 2001年) →日本テレビ年間ベストディレクター賞受賞
●『いつみても波瀾万丈』(日本テレビ 2002年) ※16年続いた番組を初回から演出として参加 →第19回ATP長寿番組賞受賞
●『激動のアフガニスタン・藤原紀香の決意』(日本テレビ 2003年) →日本ギャラクシー賞受賞
●『北秋時間』(2010年) ※秋田県北秋田周辺を舞台にした短編映画。監督を担当 →ショートショートフィルムフェスティバル(SSFF)&アジア2010「旅ショート・プロジェクト」入賞
●『ハナばあちゃん!』(2011年) ※秋田県大館市を舞台にした長編映画。監督を担当 →アジア旅番組国際グランプリ・空港賞受賞
Q. 苦手とおっしゃったドキュメンタリーで、ここまで輝かしい結果を出せたのはなぜなのでしょう? 人を好きになれたからだと思います。ちゃんと人に向き合えば、ちゃんと返ってくるし、伝わるものが撮れる。そこから付き合いも生まれるんだと気づけたんです。今でも人付き合いは得意ではありませんが、大切にするようにはなりました。
Q. ジッピープロダクション創設から27年間、ディレクター、プロデューサーとしてご活躍されたあと、2012年にソリスプロデュースを設立されました。会社設立の経緯は? ジッピーで随分やってきて、会社も大きくなり、役割は果たしたなと思ったんです。社員でいうと80~90人、業務委託も含めると120人くらいの規模になっていたので、全員に目が届かず歯がゆく感じた面もありますね。辞めて一人でフリーになってのんびりやろうと思っていたのですが、局から「会社作ってください」と言われて、今に至ります(笑)。
Q. では、ソリスプロデュースは、杉村社長の目の届く人数でやっていきたい? そうですね。若い人たちをうまく評価できて、ちゃんと人を育てられる会社にしたいです。だから、仕事もガンガン増やすのではなく、できる範囲。コンパクトな会社でいいと考えています。最終的に、会社は人だと思うので。
Q. 一般的にいえば、設立当初は「会社は仕事」になりがちですよね。そのあたり、当時のスタッフの意識はどうでしたか? たしかに、プロデューサー、ディレクターとも当初は「会社は人より仕事でしょ」という考え方が強かったのですね。でも、7年経ってだいぶ変わりました。「自分が人を育てなきゃいけないんだ」という意識になっていると思います。
Q. そうした意識改革をどうやって実現させたのでしょう? 基本的には、何回も同じこと言ってきただけです。本当に伝えるためには500回以上も言う必要がある、という統計があるくらいですからね。あとは、単純に会社として余裕が出てきたのと、僕がADに教える姿を見て「やばい」と思った部分もあるんじゃないでしょうか。
先ほどおっしゃった、読み手を意識した資料の作り方であったり。 はい。1~2年目のスタッフには、人との接し方、返事の仕方から細かく言うようにしています。ある程度の年数が経ってから立て直すのは、こちらも本人も大変ですからね。 僕のAD時代は、誰も教えてくれる人がいなかったから、プロデューサーやディレクターが何を求めているのか、観察して考えるしかなかった。それも身になる方法ではあるのですが、無駄に遠回りする必要はないので、ポイントだけはきちんと教えたいと思っています。中堅社員には、現場で怒られながら覚えることまで言いませんが、「なぜそうしなくてはいけないのか」という部分を教えています。
お忙しい中、そこまで目を配っていらっしゃるのはすごいです! 僕自身も最初の頃は余裕がなかったですけどね。制作者として追い込まれるのは慣れていますが、その中で社長としての時間を作っていくのは、なかなか大変でした。
Q. 採用に関しては、どんなことを意識されていますか? 採用した社員はTV局に派遣するのではなく、自社で育てていく方針です。そのため、少人数でも本当に育てたい人を採ろう、ということを皆で意識しています。 誰しも無意識のうちに好き嫌いで判断してしまう部分があるけれど、そこは気をつけようと、スタッフには話しています。好き嫌いで採用してしまうと、ダメだと思った瞬間に見放してしまい、双方にとって良くないですからね。この人を採用すればこういう仕事で活躍してくれそうだ、将来的にこんなことを任せられて自分にとってもプラスになりそうだ、と考えなくちゃいけない。そうすれば、長い目で育てようと思えますよね。スタッフには「一歩引いて人を見る目を養おう」と言い続けています。
採用される側にとってもいい形で、すばらしいですね! それではここで、ソリスプロデュースさんに新卒入社して3年目のAD・上月佑花(かみつき ゆうか)さんにお話をうかがいます。 Q. 上月さんは、どんな業務を担当されているのですか? 今は年末特番と、読売ジャイアンツの社会貢献活動に密着する年に一度の番組を担当しています。ジャイアンツの番組は入社から毎年担当しています。あとは、日テレの特番『悪い奴らは許さない!』でもADをしていました。
Q. 上月さんから見て、ソリスプロデュースはどんな会社でしょう? スタッフ皆の仲がいい会社だと思います。特番が多いのでいろんな人と組む機会がありますし、そもそも少人数なので、担当業務に関係なく一人ひとりとコミュニケーションを取れるんです。毎月1回、スタッフ皆で集まってご飯を食べる「ソリス会」も楽しいですし、いろんなことを聞ける機会としてもいいなって思います。
Q. 普段、杉村社長とお話しする機会もあるのですか? あります。一緒に番組はしていないので、他愛のない話をするくらいですが。私が誰かと話しているところに、杉村さんが入ってきてくれたりもします。「杉村社長」ではなく、みんな「杉村さん」と呼んでいますよ。
Q. 杉村社長はご自身のことを「細かい」「うるさいオヤジ」と話されていましたが、そういった部分も感じますか? 普段はフレンドリーな方ですけど、やっぱり仕事になるとスイッチが入るというか。オンオフがしっかりされているんだと思います。
Q. 仕事モードの杉村社長の言葉で、特に印象に残っているものなどはありますか? 新入社員に向けた研修も兼ねた集まりがあって、2年目以降の人も時間があれば参加するんですけど、そこで聞く杉村さんの「AD 7カ条」は大事にしています。なかなか意識できていないこともあるので、毎年それを聞いて「もっと気をつけなきゃ」と思っています。
Q. 上月さんはこの先、どんなことにチャレンジしていきたいですか? バラエティ番組が好きなので、ゆくゆくはディレクターとして作れたら嬉しいですね。今担当している年末特番がバラエティ寄りなので、いい経験を積ませてもらっています。いろんなことを吸収して、これからの業務に活かしていきたいです。
ありがとうございました。今後も頑張ってください! では、再び杉村社長にお話をうかがいます。 まずは、いろんなものを見たり読んだり聞いたりして、いろんなことを感じて欲しい、ということですね。きれいなものを見て「きれいだね」と言える、おいしいものを食べて「おいしい」と言える人が、クリエイターになって欲しい。おいしいものを食べても何も感じない、何も言わない人は、おいしい撮り方をできないですからね。「ボーっと生きてんじゃねえよ!」ということです(笑)。
Q. それは、杉村社長ご自身がキャリアの中で大切にしてきたことでもある? そうですね。感動して、面白がる。なおかつ、作り手としての視点も忘れないようにしたいと思っています。例えば芝居を見て感動したあとに、「向こうの席から観たらどうなんだろう?」と考えてみたり。そういうことは常に気にしています。
Q. 年齢を重ねるにつれて、感性が枯れてくる人もいると思うのですが、保ち続けるために意識していることなどはありますか? 自分だったらスルーするけど誰かが面白いと話しているものに関して、若い頃以上になるべく気にして、触れてみるようにしています。歳を重ねた今の方が「もっといろんなことを感じたい」という欲があるのかもしれません。常にいろんなものに触れている加藤浩次さん(極楽とんぼ)と一緒に仕事しているので、刺激をもらっている面もありますね。いつも楽屋で「あれ見ました?」「あれ読みました?」となりますから。
Q. いろんなものに触れるのは、気分転換にもなりますよね。もしよければ、杉村社長のご趣味などもうかがえますか? 家では本当に、本を読んだり、音楽を聴いたり、テレビを見たりするくらいです。休みの日は家事をしたり、ランニングやゴルフの打ちっぱなしに行ったりするくらい。数日の休みが取れたら海外に行くこともありますが、ビーチかプールサイドで本を読んだり音楽を聴いたりするだけで、ぼーっとしています。 車も好きでジープに乗っていますけど、とりたててドライブに行くわけではなく。通勤とか、打ち合わせやロケに行くときに運転するだけで満足しています。
公私にわたり、いろいろとお答えいただきありがとうございます。 Q. 最後に、杉村社長が実現したい今後のビジョンを教えてください。 やはり、会社を大きくしようとは思っていないです。今のメンバーと、増えてもあと数人かなと。20人弱で楽しく仕事ができればいいですね。今まで付き合ってきたフリーの人たちの手助けもしつつ、僕がいなくてもやっていけるような基盤をちゃんと作りたいと思っています。
Q. と、いいますと? 現在は、僕のこれまでの付き合いで続いている仕事が多く、新規の案件も僕がいただいてくるパターンが多いので、そこをもう少し会社としてできるようにしたいです。僕ありきで受ける仕事ばかりだと、会社にお金は入るけど、スタッフの成長という意味ではもう一つなんですよね。だから、「自分たちで仕事取ってこい」「企画を考えろ」と言い続けています。僕が動くのはできる限り我慢して、どうしたら仕事を取れるのか、経験を積んでもらいたいです。
それができるようになったら、あとはもうお任せ。自分たちで会社を好きなようにしてくれればいいかな。ひとまずは、皆が明るく楽しく働けるように、もうしばらく頑張ろうと思います。 |
作り手の気持ちがわかるだけに、自社の社員だけでなく、関わるクリエーター皆の環境をより良くしたいという、太陽のような温かさを持った方と感じました。
社長さんというより業界の良き先輩のような雰囲気で、杉村社長の元で育てられる若手は幸せだなと思いました。
お忙しい中、大変ありがとうございました。
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